<米史上3人目、ついに弾劾訴追されたトランプ大統領。1月に行われる弾劾裁判で有罪になる可能性は少ないが、決して無駄ではない。そして現在の共和党は血迷っている>
アメリカではこれまで、弾劾訴追され、かつ、有罪・罷免に追い込まれた大統領はいない。この国の歴史を通して、そんな前例はない。いまだかつて、ただの一度もだ。
こんなふうにしつこく繰り返すのは、ドナルド・トランプ大統領が弾劾されても「大したことはない」というムードにうんざりしているからだ。
民主党が過半数を占める下院は、トランプのウクライナ疑惑をめぐる「権力乱用」と「議会妨害」の2つの弾劾条項の採決準備を進めていた。だが大統領に報いを受けさせようと躍起になっている人々にすら、どこかさめた空気が漂っていた。
下院は12月18日の本会議で弾劾条項を承認。トランプは弾劾訴追された。これを受けて1月に上院で弾劾裁判が行われるが、共和党が過半数を占める上院で罷免に必要な3分の2以上の賛成を取り付ける可能性は確かに低い。とはいえ、アメリカの歴史においては、大統領が弾劾され、しかも有罪になることのほうが、前例のない事態なのだ。
弾劾されても有罪にならなければ全ての努力が水の泡、と考えるのはおかしい。弱気になるのも分かるが、これでは、実際には成功したためしのないことをやろうとしているという諦めムードを広げることになる。有罪になるかどうかが報いを受けるかどうかの基準だとしたら、報いを受けた大統領はいまだかつて1人もいないことになる。そんな考え方はナンセンスだ。
トランプが弾劾訴追されたのは現実だ。弾劾自体が彼に対する報いであり、その痛手は途方もなく大きい。弾劾された大統領という汚点は永遠にトランプに付きまとうことになるはずだ。
民主党は何事も敗北のように言いがちだが、トランプの弾劾訴追は画期的な出来事だ。2018年の中間選挙で有権者が表明した願いが尊重され、責任逃れをする大統領に法の裁きが下されようとしている。たまには来るべき勝利を受け入れてもいいのだ。
弾劾条項が歴史的なものだと認められたからといって、弾劾で何もかも解決できるということにはならない。一方で、これから行われる上院での弾劾裁判の茶番を批判しないでいいわけでもない。
裁判は簡略化の可能性も
弾劾裁判で「陪審役」を務める共和党のリンゼー・グラム上院議員やミッチ・マコネル上院院内総務らは、公正な裁判をする気がないことを明言している。こうした態度は非難できるし、非難すべきだ。
彼らは採決で罷免に反対票を投じ、実際に証人を呼んで証言させるプロセスを省いて大統領を守るつもりでいる。そんなことを口にしてはばからないこと自体、現在の共和党が血迷っている証拠にほかならない。
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2019-12-23 07:50:00Z
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