トランプ米大統領は、総額5000億ドル(約55兆円)を上回る中国からの全輸入品に追加関税を課すよう通商代表部(USTR)に指示した。

USTRは10日、追加関税が課されていない約3000億ドル(約33兆円)分への発動に向けた手続きに着手した。10日未明に第3弾の2000億ドル(約22兆円)分の追加関税率を引き上げたばかり。第4弾にはiPhone(アイフォーン)やナイキのスニーカーも含まれる。中国は報復措置に出る構え。日本企業も対象商品の生産拠点を中国から他国へ移す動きを加速させている。

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USTRは「トランプ大統領が残りの中国からの輸入品の税率を上げるよう指示した」と明らかにした。13日に手続きの詳細を公表する。スマートフォンやスニーカーなど消費財が幅広く含まれる可能性がある。今後、産業界から意見を聴き、除外品目を定める。発動は数カ月後の見通し。

米中による2日間の閣僚級貿易協議は10日午前に終了した。中国中央テレビによると、中国の劉鶴副首相は10日「われわれは必ず対応策を取る。原則の問題では決して譲らない」と述べ、対抗措置を打ち出すことを改めて強調した。

トランプ氏は5日、全輸入品に25%の追加関税を速やかに課す考えを示していた。10日には「第3弾」の2000億ドル分への25%関税を発動。なりふり構わぬ強硬措置を進めながら、中国との交渉を続ける考えを示した。さらに全商品が対象となる第4弾も指示。一方で「交渉次第で撤回するかもしれないし、しないかもしれない」と述べ、譲歩を促す姿勢も示した。

日用品にまで広がる中国への関税引き上げには米国内から反発もある。スポーツ関連産業でつくる団体は「ヘルメットやグラブも影響を受ける。公平な貿易制度は極めて重要だが、関税引き上げという手法は誤りだ」と訴えた。

日本企業は長期化を見据え、生産移管を進めている。三菱電機やコマツ、東芝機械などは昨年、生産の一部を中国から他国に移管済み。リコーは「第4弾」へ備えを進め、複写機が対象になれば、米国向け製品は中国ではなくタイから送る方針だ。