<イランとの対決姿勢を強める現状はイラク戦争の開戦前夜と酷似している>
イランとの戦争は望まない、という言葉は建前か。米政権の行動を見ると、本音は正反対だと思えてくる。
15年に結ばれたイラン核合意からの離脱をドナルド・トランプ米大統領が表明したのは1年前のこと。以来、経済制裁強化やイラン産原油の全面禁輸、イラン革命防衛隊のテロ組織指定によって、米政権は両国関係を大幅に悪化させ、5月5日には原子力空母と爆撃機部隊を中東に派遣すると発表した。
対するイランは5月8日、核合意について履行の一部停止を表明した。トランプ政権にとっては、対イラン攻撃を正当化する格好の口実になるのではないかと懸念されている。
トランプ政権の「本音」が何より表れているのは、今やジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)が対イラン政策をほぼ掌握しているという事実だろう。ボルトンはイランの体制転換を唱え続けてきた強硬派の代表格で、03年3月のイラク戦争の開戦に大きな役割を果たした人物の1人でもある。
観測筋の間では、現状はイラク侵攻直前の状況に似ていると指摘する声が上がる。顕著な共通点はボルトンの存在だ。しかも今回、ボルトンは当時よりはるかに有力な立場にある。
03年当時は国務次官だったボルトンは開戦を強硬に主張し、武力行使を正当化するために情報を操作したと非難された。イラク戦争は今では戦略的大失敗だったという評価が一般的だが、ボルトンは15年になっても、自分が果たした役割について後悔はないと公言している。
5月5日の発表を行ったのは、トランプでもパトリック・シャナハン国防長官代行でもなく、ボルトンその人だ。
「アメリカまたは同盟国の権益に対する攻撃は、いかなるものでも容赦ない武力行使を招くとの明快なメッセージをイランに送る」べく、空母エイブラハム・リンカーンを中心とする打撃群と核搭載可能なB52戦略爆撃機4機から成る部隊を中東に派遣すると、ボルトンは語った。「前代未聞の出来事だ」。国務省の元情報担当幹部で、イラク開戦直前に上司だったボルトンと衝突して辞職したグレッグ・シールマンはそう語る。「国家安全保障担当の大統領補佐官が独断で声明を発表するなど、イラク戦争のときにもなかった」
<リスクは前回より大きい>
民主党の上院議員2人は今年3月、「イラク開戦から16年後、不完全で誤解を招く論理に基づいて、私たちは再び中東での無用な戦争へと突き進んでいる」とワシントン・ポスト紙への寄稿で述べた。トランプ政権批判派がみるところ、リスクと危険は前回よりも大きい。イランの軍事力はイラクよりもはるかに強大だからだ。
イラン核合意は、サダム・フセイン時代のイラクに対して国連が実施した欠陥だらけの制裁より、和平維持の枠組みとして有効だった可能性もある。
それに対してトランプは、「イランを挑発して攻撃させようとしているとしか思えない」と、シールマンは言う。「イランは核合意の内容をかなりちゃんと履行してきた。そうしなかったのはアメリカのほうだ」
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190516-00010001-newsweek-int
2019-05-16 07:18:00Z
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