<海洋資源に恵まれた国ならどの国でも頭を悩ませるのが外国漁船による違法操業。これに敢然として立ち向かい、拿捕した船の沈没を命じた大臣は「女ゴルゴ13」の異名をもつ>
インドネシアの排他的経済水域で許可なく違法に操業する外国籍漁船などへの厳しい対応を続けているインドネシア政府は5月に入ってから拿捕した外国漁船の処分を再開した。これまでは漁船を砲撃や爆弾などで爆破という派手な方法で処分していたが、今回は海水注入による水没というより穏やかな方法を採用している。拿捕した違法操業後船の処分は約8カ月ぶりとなる。
スシ・プジアストゥティ海洋水産相が5月4日に政府関連行事で訪問したカリマンタン島ポンティアナックで、51隻の違法操業漁船を国内の5か所で海上保安機構(日本の海上保安庁にあたる)などによって水没処分させたことを明らかにした。インドネシアのアンタラ通信が伝えた。
インドネシア当局によると38隻のベトナム船籍の漁船を含めた51隻が今回の処分対象となっており、ベトナム以外にマレーシア、中国、フィリピンなどの漁船が含まれているという。
こうした漁船は南シナ海南方のインドネシア領ナツナ諸島周辺海域でカツオ、マグロ、カジキなどを無許可で獲っている。インドネシア海上保安当局や海軍の艦艇によって違法操業中に拿捕された漁船は、乗組員を拘留した後に安全を確保して漁船を処分しており、人的被害は発生していない。
今回注水によって水没させる方法を選んだ背景には、爆破による環境汚染を避け、なおかつ沈没させた船が海底で漁礁となることなどに配慮したものとみられている。
強硬姿勢に閣内からも反論
スシ海洋水産相は「我々はインドネシアの海で行われている違法操業をストップさせるためにこうした処分を実施している。我々の海洋資源、海産物はインドネシア国民のものであり、外国人のためのものではない」と述べて、処分の正当性と違法操業の根絶を訴えた。
インドネシアは2014年のジョコ・ウィドド政権誕生以来、領海や排他的経済水域の警備警戒、権益保護に特に力を入れており、スシ海洋水産相はこれまでもたびたび拿捕した外国籍漁船を当該国の返還要求にも関わらず爆破処分するなどの強硬な姿勢を示してきた。海洋水産省によると2014年10月以来処分した違法操業外国漁船は約500艘に上るという。
こうした厳しい姿勢に内閣の一部から反対論がでたこともあった。2018年1月には海洋水産省や運輸、観光などを統括するルフト・パンジャイタン海事担当調整相と一部国会議員から「すでに十分である」「強硬姿勢は不要だ」などと反対する声が出た。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/05/13-19.php
2019-05-13 09:00:39Z
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