ジェイン・ウェイクフィールド、テクノロジー担当記者
ニュージーランド・クライストチャーチで15日午後、2カ所のモスク(イスラム教の礼拝所)で銃撃事件があり、計49人が死亡し、48人が負傷した。銃撃犯は自分の犯行の様子を撮影し、フェイスブックでライブ配信した。
ソーシャルメディア側は動画を徹底的に削除して回ったものの、動画は限りなく複製され、広く拡散された。
さらに、各国の主要メディアが問題の動画を静止画やGIFアニメを、場合によっては動画全編そのものまで、自分たちのニュースサイトのトップページに掲載した。
こうした状況でまたしても、ツイッターやフェイスブック、YouTube、レディットなどのソーシャルメディア・プラットフォームが極右主義と取り組み、そして失敗する様子が浮き彫りになった。
・ニュージーランド銃撃の容疑者、出廷 49人死亡、48人負傷
銃撃動画の拡散が続くと、共有をやめるよう呼びかける投稿が相次いだ。動画の拡散こそ「テロリストのねらいだ」という指摘もあった。
何が拡散したのか
・銃撃開始の約20分前に、オルタナ右翼に人気の掲示板「8chan」の政治板に何者かが、容疑者のフェイスブック・ページへのリンクを含む内容を投稿した。この投稿者は、間もなくライブストリームを開始すると書き、憎悪に満ちた長文の文章をフェイスブックに掲載していた
・調査報道サイト「ベリングキャット」のアナリスト、ロバート・エヴァンズ氏によるとこの文書には、読者を混乱させるための「冷笑的で質の低い『荒らし』文章とミーム」が大量に含まれていた。ミームとはこの場合、ソーシャルメディアで大勢が使う加工画像やテキストのこと
・投稿された犯行動画でも銃撃犯はミームに言及した。発砲開始前に「PewDiePieに登録を!」と叫んだのは、YouTubeの人気アカウントの登録者数を1位にしようと呼びかけるミームを念頭においてのことだった。PewDiePieは人種差別表現を使い批判されたことがあるため、銃撃犯はその名前を使えばオンラインで反応があると承知していたはずだと言われている。PewDiePie氏は事件後、「この人物に自分の名前を口にされて、まったく吐き気がする」とツイートしている
・銃撃の様子はフェイスブックでライブストリームされた。この動画は削除されたが、たちまち複製され、YouTubeやツイッターなど複数のサイトで広く共有された
・ほとんどのサイトは素早く問題の動画を削除しているが、それでも動画を見たという人は多い
・複数のオーストラリア・メディアは動画の一部を放送。各国の主要紙も掲載した
・米ニュースサイト「バズフィード」のテクノロジー記者、ライアン・マック氏は、どこでビデオを見たか時系列で並べている。約70万人がフォローする認証つきツイッター・アカウントもリツイートしていたという
反応は大勢が銃撃動画を複製して投稿したり、共有したりしたが、その一方で大勢がこれに嫌悪感をあらわにし、共有はおろか、見ないようにと呼びかけた。
アメリカのオマール・スレイマン氏は、「テロリストが我々の兄弟姉妹を撃ち殺すビデオを流通させないでくれ。それこそ、あの男の望むことだ」と呼びかけた。
https://twitter.com/omarsuleiman504/status/1106388161964507137
動画を掲載した報道機関に怒る人も大勢いた。
たとえば英チャンネル4のアナウンサー、クリシュナン・グル=マーティ氏は英デイリー・メールと英デイリー・ミラーを名指しして、「クリック稼ぎにしても最低のやり方だ」と批判し、削除するよう求めた。
https://twitter.com/krishgm/status/1106477066000715776
https://twitter.com/krishgm/status/1106483800333316097
バズフィードのマーク・ディステファノ記者も、英デイリー・メール・オンラインが、銃撃犯の74ページに及ぶ「犯行声明」を記事からダウンロードできるようにしていたと指摘。デイリー・メールは後にサイト上から文書を削除し、そもそもダウンロードできるようにしていたのは「ミス」だったと発表した。
デイリー・ミラーのロイド・エンブリー編集長も後に、動画を削除したとツイートし、そもそも掲載したのは「テロリストのプロパガンダ動画に関する弊社の方針に抵触する」と書いた。
ソーシャルメディア各社の対応はソーシャルメディア各社は乱射事件の被害者を思いやるコメントを発表し、不適切なコンテンツは急ぎ削除すると強調した。
フェイスブックは、「ニュージーランド警察は、ライブストリーム開始から間もなくフェイスブック上の動画について我々に警告した。それを受けて我々は、銃撃犯のフェイスブック・アカウントと動画を削除した」、「我々はさらに、この犯行や銃撃犯を称賛したり支持したりする内容に気づき次第、それを削除する。ニュージーランド警察の対応と捜査が進むと共に、我々も直接協力していく」とコメントした。
YouTubeはツイッターで、「ニュージーランドで今日起きたひどい悲劇に、心を痛めている。暴力的な動画をすべて削除するため精力的に対応している」と書いた。
https://twitter.com/YouTube/status/1106431532976074753
極右過激主義に対するソーシャルメディア各社のこれまでの対応は、むしろバラバラだった。
ツイッター社は2017年12月に、複数のオルタナ右翼アカウントを凍結した。それ以前には、「オルタナ右翼」という表現を広めたアメリカの白人至上主義者、リチャード・スペンサー氏のアカウントを一時凍結したが、後に復活させた。
フェイスブックは2018年4月にスペンサー氏のアカウントを凍結したが、憎悪をあおるヘイトスピーチと正当な政治発言を区別するのは難しいことだと述べていた。
YouTubeは今月、イギリスで禁止されたネオ・ナチ団体ナショナル・アクションの宣伝ビデオの扱いが不適切ないしは無責任だったと批判された。
英野党・労働党のイヴェット・クーパー下院議員によると、YouTubeはこのビデオをブロックすると再三約束しているが、それでも動画は繰り返し掲載されている。
これから何が必要なのか英サリー大学の政治学者、キアラン・ギレスピー博士は、今回の動画は確かに衝撃的だったが、問題は1本の動画を超えてはるかに深刻だと言う。
「問題は虐殺の生中継に留まらない。ソーシャルメディア各社は大急ぎで動画を削除したが、ソーシャルメディアというものの性質上、動画の共有はなかなか止められない。しかし、事件の生中継に先駆けて起きていることの方が、大きな問題だ」
ギレスピー博士は政治学者としてYouTubeを「たくさん」使う。そして、しばしば極右コンテンツを「おすすめ」されるのだという。
「YouTubeには大量の極右コンテンツがある。どれだけあるのか、検討もつかない。YouTubeは、イスラム過激主義による洗脳ビデオの脅威にはしっかり対応した。明らかに正当な内容ではないとみなされているからだ。しかし、脅威としては同じようなものなのに、極右ビデオを排除しろという圧力は、イスラム過激主義に比べると少ない」
「今後はYouTubeに対して、人種差別や極右のチャンネルやコンテンツの推奨をやめるよう求める声が高まるだろう」
表現の自由と暴力的イデオロギー英オックスフォード・インターネット研究所のバラト・ガネシュ博士も、同意見だ。
「もちろんビデオを削除するのが正しい対応だが、ソーシャルメディアはこれまで、極右組織に意見交換の場所を提供してきた。一貫した統一的な対応はできていない」
「明らかに憎悪をあおる暴力的イデオロギーを広めている集団がいても、ソーシャルメディア各社には、対応を間違えるにしても、表現の自由を守ったほうが良いという意識があった」
ソーシャルメディア各社は「こうしたイデオロギーによる脅威を、今までよりはるかに真剣に受け止める必要がある」とガネシュ博士は言う。
「右翼過激主義の世界的ネットワークが広がっているのだと認識して、別枠扱いする必要があるかもしれない」
ギレスピー博士もガネシュ博士も、大変な取り組みになると認める。特に極右主義者の多くは、自分たちの議論は批判も多いが「正当」なものだと見せかけるのが得意だからだと、ギレスピー博士は言う。
「そういう人たちは、イスラム教の脅威を話題にするのは確かに批判も多いが、議論に値する正当なテーマだと主張して、論を展開する」
ソーシャルメディアにとって明確な判断基準を設けるのが極めて難しい領域だ。しかし、ニュージーランドの悲劇を受けて、各社は今まで以上に取り組む必要があると、多くの人が感じている。
(英語記事 Christchurch shootings: Social media races to stop attack footage)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190316-47595088-bbc-int
2019-03-16 10:52:00Z
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