【シドニー=松本史】ニュージーランド(NZ)のクライストチャーチのモスク(イスラム教礼拝所)で起きた銃乱射事件で、交流サイト(SNS)に容疑者の男と同じ名前のアカウントで犯行声明とみられる文書が投稿されていたことが分かった。容疑者は極右主義的な思想を持っていたとされ、ネット掲示板などで情報を収集、SNSなどで犯行と主張を世界に拡散させようとしたとみられる。
15日に発生し、49人が死亡した無差別テロの主犯格として逮捕されたオーストラリア国籍のブレントン・タラント容疑者(28)は16日に裁判所に出廷した。同容疑者と同じ名前のツイッターのアカウントに投稿された声明は70ページを超える内容で「侵入者らに我々の国が決して彼らのものにならないと示すために攻撃を実行する」などと記されていた。
「インターネット以外の場所で真実は見つけられない」。反移民主義、白人至上主義をうかがわせる文言が並ぶ同文書を読むと、男がネットに依存し、その影響力を最大限活用、社会に発信しようとしていた姿が浮かび上がる。
犯行声明は「想定質問」に答える形式で書かれており「どこで思想を調べ、発展させたのか」との問いには「もちろんインターネットだ」と回答。「(オンラインのシューティングゲーム)『フォートナイト』が私を殺人者になるべく訓練してくれた」とも記していた。容疑者はヘルメットにつけたカメラでSNS上で犯行を「生中継」しており、オンラインゲームから着想を得ていた可能性が浮上する。
米ニューヨーク・タイムズは同容疑者を「世界を旅行したが、ネットの世界で生きていた」と評した。豪国籍を持つ容疑者は2017年ごろからNZでの短期滞在をくり返していたとされる。逮捕された他の2人との接点についても、ネット上でのつながりだったとの見方もある。
NZのアーダーン首相は逮捕された3人について「豪州でもNZでも前科はなく、監視対象者でもなかった」と明らかにしている。窃盗や恐喝などの犯罪を重ね、刑務所への出入りをくり返す中で過激派の思想に染まるかつてのテロ容疑者のイメージとは異なる。インターネット上での情報収集や連絡は、情報機関の捜査線上に浮かび上がりにくく、捕捉されにくい一面を持つ。
容疑者は「8chan」と呼ばれる匿名のネット掲示板に事件予告と生中継のフェイスブックページのアドレスを書き込んだ。同サイトは匿名性が高く掲示板の話題は多岐にわたるが、過去には児童虐待やセクハラに加え、人種差別的内容の投稿がされ、有識者から問題視されたこともある。 15日の犯行後、同サイトでは容疑者の行動をたたえる極右主義者らの書き込みも散見された。豪公共放送ABCは「捜査当局は今後、こうした(掲示板などの)情報を調べ、若い豪州人がネットを通じてどう過激化されていくかを探ろうとするだろう」と報じている。
SNSは日々の利用を通じて個人の嗜好を把握し、その人に見合った情報を優先的に提示する人工知能(AI)システムを備えている。この結果として起こり得るのが、人が見たい情報だけしか見なくなり視点が極端に偏ってしまう現象だ。
11年にインターネット活動家のイーライ・パリサー氏はこうしたSNSを通じた情報選別を「フィルターバブル」と名付け、社会分断の可能性を指摘した。トランプ米大統領の一部の熱狂的な支持層も、SNSで同氏に批判的なニュースを遮断しているとされる。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO4257320016032019EA2000/
2019-03-16 09:03:00Z
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